なぜ、パフォーミング・アーツなのか?
現在私たちが生きる社会は、多様な文化的背景と価値観をもつ人々が共生する社会へと大きく変貌しています。その狭間で、日々の生活の中で思いもよらない他者とのギャップに戸惑い、気持ちを伝え合う困難さに直面する場面が、世代間、組織間、地域間、家族間でも徐々に増えてきています。
従来、コミュニケーション能力を育む機能は、地域社会=コミュニティが中心的な役割を担ってきました。しかしながら、時代の変化に伴い、コミュニティ作りに参加し他者と接触する機会そのものが大きく減少しており、特に子どもたちは、対面のコミュニケーションの必然性そのものを十分に体感することなく、大人へと成長してしまう状況に置かれています。
コミュニティの形が変化した現在、コミュニケーション能力を育てる役割は、主に学校に求められるようになってきています。しかし、数々の現場からは、今の時代に必要な「コミュニケーション能力」の育成には、従来の「学び」のあり方だけではもはや対応しきれないという、深刻な危惧の声が聞こえてきています。
舞台芸術の分野に従事してきた私たちPAVLICのメンバーは、これまでに学校や企業と協働して、様々な「参加体験型学習=ワークショップ」を実践してきました。それらの経験を踏まえ、いま一度「コミュニケーションとは何か」「コミュニティにとって“学び”とはどうあるべきか」という将来へのビジョンを新たに描き、広く分かちあうための機会が必要なのではないか。そして演劇などのパフォーミング・アーツは、その新しい「学び」のビジョン作り、人々が進んで参画できるような活力のあるコミュニティ作りに、大きな役割を果たすことができると、私たちPAVLICは考えています。
なぜなら、パフォーミング・アーツ、特に演劇は、様々な価値観をもつ人々が、チームとしての協調と調和を支えとして、無数の可能性の中から共有された想いをすくい取ってひとつの作品を創り、広く開かれた不特定多数の「第三者=観客」へ届けようとする、いわば共有体験を促す活動だからです。
自分の想いを言葉と体を駆使して伝えようとする表現力、相手が伝えようとする真意を理解する受容力など、人々の主体性や創造性に働きかけながら、対話や共有体験を通じたコミュニケーションを有機的に生みだします。その意味で、演劇などパフォーミング・アーツは、極めて社会的で公共性の高い活動なのです。
舞台芸術活動やワークショップの知見を通じて、学校やコミュニティと、そこに生きる人々を、よりダイレクトに、よりダイナミックに結びつけるための機会を創出し続けるために、私たちPAVLICは活動を続けていきます。
PAVLICが手がける3つの事業
コミュニケーション教育の推進
①『児童生徒のコミュニケーション能力の育成に資する芸術表現体験事業』(通称:コミュニケーション教育推進事業)を利用した、全国の小・中・高校等でのワークショップの企画・運営・実施
地域内コミュニケーションの推進
② 全国各地の様々な団体と連携し、「防犯」「防災」「ホームレス支援対策」「多文化共生・理解」等の社会テーマと、演劇を組み合わせた様々なワークショップ、イベント、育成プログラムの提案と実施。
世代間/組織内コミュニケーション、異文化間コミュニケーションの推進
③ 様々な企業や団体、大学と連携し、「組織内での相互理解」や「キャリア教育」「国際理解」などを主たる目的としたワークショップや研修プログラムの提案と実施。